畳は、和室空間を演出する伝統的な素材として、多くの日本の住宅には欠かせない存在となっています。しかし、どんなにこまめに掃除をしていたとしても、時の経過とともに畳は自然と劣化してしまいます。
「畳の色が褪せてきた」「畳の表面が毛羽立って、服がひっかかるようになった」など、畳のメンテナンス時期が近づいているのを感じている人も多いかもしれません。
そこでこの記事では、畳の「表替え」について、時期や方法をわかりやすく解説していきます。畳を長くきれいに保つための手引きとして、本記事をお役立てください。
畳の表替えって?まずは畳の構造を知る
畳の表替えとは、畳表を新しくすることを言います。しかし、その畳表はどの部分を指すの?と疑問に思うこともあるでしょう。表替えを検討するときには、まずは畳の構造を知ることが大切です。畳は、以下の3つで構成されています。
- 畳表(たたみおもて)
- 畳床(たたみどこ)
- 畳縁(たたみべり)
それぞれについて、詳しく解説していきます。
畳表(たたみおもて)
畳表とは、畳の表面の、ござのような部分のことです。畳表は、日本産のい草や中国産のい草、化学繊維や和紙で作られているのが一般的です。い草でできた畳表は、湿気をちょうどよく吸収する特性があり、和室の湿度を保つ役割を果たしています。
しかし、時の経過とともに畳のい草は劣化し、調湿機能を失っていきます。また、畳表は日光や摩擦によって劣化しやすく、使用すると色が褪せて摩耗してしまいます。
劣化した畳をそのまま使っていると、触感が不快になっていくだけでなく、汚れやホコリが溜まりやすく、虫が発生するリスクが高まるため注意が必要です。
畳床(たたみどこ)
畳床は、畳表によって覆われている部分です。畳が敷き詰められているときには目に見えません。ただし、畳の弾力や断熱性、湿度調整、音の吸収などの性質が左右される、重要な部分です。
かつては、畳床には稲藁が使われていましたが、最近では建材も使用されるようになりました。現代では、藁とその間にポリスチレンフォームという建材を挟んで作られた畳も多く見られます。建材床は、稲藁よりも軽量で安価、断熱性にも優れ耐久性もあることから、人気が集まっています。
畳縁(たたみべり)
畳縁とは、畳の長編に取り付けられている布のことです。畳の側面を飾る畳縁には、多彩なデザインや模様があります。現在、主流となっているのは低価格の化学繊維ですが、綿や麻など、上質な質感を持つ畳縁もあります。かつて畳縁は、色や模様によって身分を表すものでしたが、現代ではデザインや質感で選ぶ人が多くみられます。
畳縁は、畳表を畳床に固定する役割があります。一部の店舗では、畳の裏返しや表替えの際に、畳縁を交換することもあります。畳縁にはさまざまな色や種類があるため、自分の好みのものに変えてデザインを楽しむこともできるでしょう。
一方で、琉球畳や縁なし畳といった、縁のない畳もあります。縁なし畳は、通常使う畳表よりも幅の広い畳表が使われ、四辺を内部に折り曲げながら巻き込んで圧着されています。
畳の裏返し・表替え・新調の違い
畳のお手入れには、裏返し、表替え、新調の3つがあります。お手入れの目安時期と、簡単な特徴は下表の通りです。
手入れの種類 | 目安の時期 | 内容 |
裏返し | 使用開始から5〜10年後 | 畳表を反対側にして再利用する |
表替え | 裏返しから4〜5年後 | 畳表と畳縁を新しいものに交換する |
新調 | 使用開始から10~15年 | 畳床を含めた畳全体を新しいものに替える |
時期は目安ですので、畳の状態にあわせて適切なお手入れ方法を選ぶことが大切です。お手入れの時期は、和室の使用頻度や畳の上での過ごし方によっても左右されます。ここでは、それぞれのメンテナンス方法について、詳しく見ていきましょう。
裏返し
裏返しは、畳表を裏返し、再利用する方法のことです。畳表は基本的に裏表で2回使用できるため、裏返すだけで新しさを取り戻すことができます。裏返しは、畳1枚に対して1度しか行いません。2度以上使うときには、表替えを検討しましょう。
裏返しをするときに、通常、畳表は交換せずにそのまま使用しますが、畳縁が劣化していれば新しいものに取り替えることもあります。
一般的に、畳の使用開始から5〜10年後に裏返しを検討する時期とされています。畳が日光によって色褪せたり、毛羽立ちが顕著になったりした場合は、裏返しを検討するサインと言えます。裏返しにかかる作業時間は半日から1日と、比較的短時間で完了する畳店が多くみられます。
表替え
表替えは、畳表と畳縁を新しいものに交換する作業のことです。裏返しをしたあと、おおよそ4,5年が経過したときが表替えに適しています。表替えをするときには、畳床は交換しません。
裏返しは和室の中で行うこともありますが、表替えの場合、畳屋や専門の作業場に持ち込んで畳表を取り外し、新しいものに付け替えるのが一般的です。表替えは、大抵の場合、1日で終わる作業です。
新調
新調は、文字通り、畳床を含めた畳全体を新しいものに替えることを意味します。畳を使い始めてから10年~15年以上が経過し、畳の上を歩くと沈み込むなど、畳床の劣化を感じたときに行います。
または、害虫の問題が発生している場合にも、新調がおすすめです。新調するときには、今の畳の寸法を測り、寸法にぴったりあった新しい畳を制作して取り替えます。通常、畳の作成には2日から10日程度かかります。
畳の裏返し・表替え・新調の費用相場
畳の手入れにかかる費用相場を、下表にまとめました。
手入れ方法 | 費用相場 |
裏返し | 4,500円/1枚 |
表替え | 7,000円〜15,000円/1枚 |
新調 | 12,000円〜30,000円/1枚 |
最もコストを抑えられるのは裏返しで、畳1枚につき4,500円程度が目安です。6畳の和室であれば、3万円ほどで行えます。一方、畳を新調する場合は、1枚あたり2万円程度かかります。6畳で12万円、8畳で16万円程度はかかるでしょう。
なお、畳縁の交換は1畳につき3,000円程度が目安です。また、それぞれの手入れにかかる費用は、畳の素材によっても大きく変わります。
値段が一番安いところに新調を頼んだら、今までの畳とは違い質の低い畳だったということもあるため、内容をよく確認しておくことが大切です。
なお、畳のメンテナンスを依頼するときには、専門店への相談をおすすめします。そのとき、「予算を最小限にしたい」、「質の高い畳を選びたい」、「デザイン性の高い畳を選びたい」など、自身の要望をしっかり伝えることが大切です。意向に沿ったメンテナンスをするためにも、専門家のアドバイスを受けましょう。
畳の表替えをするときの注意点
畳の表替えをするときには、以下の2つに注意する必要があります。
- 畳床の状態をチェックする
- 表替えができない畳もある
それぞれについて、詳しく解説していきます。
畳床の状態をチェックする
表替えをするときには、畳床の状態をよく確認しておきましょう。表替えは、畳表のみを交換するため、畳床は変えずにそのまま使います。
表替えは、新調よりも費用が抑えられるという魅力がありますが、実際に表替えが適しているか、判断が難しいことがあります。見た目は新品同様になりますが、畳床が劣化していた場合、「踏み心地が不快」といった不満や、「表替え後に、結局新調することになった」というケースも珍しくありません。
もし畳床が大きく劣化していた場合は、新調も検討することが大切です。畳床が、以下のような状態になってないかを確認してみてください。
- 畳に凹んでいる部分がある
- 畳の厚みが、5mm程度低くなっていて敷居と段差ができている
- 畳と畳の間にすき間がある
- 畳の上に乗ると、フカフカと柔らかい感覚がある
表面の見た目だけでなく、畳床を含めて、全体的な状態を確かめておくことが大切です。表替えと新調、どちらがよいか迷った場合には、経験豊富な専門家に相談してみてください。畳のプロに頼むことで、外観だけでは判明しづらい部分も詳しく調べてもらえます。
表替えができない畳もある
表替えをするときには、ご自宅の畳が表替えができる畳かを確認しておきましょう。近年、畳のバリエーションは豊富になっており、スタイリッシュな縁なし畳や、バリアフリーのマンションに適した薄型の畳が人気を集めています。
しかし、新しいタイプの畳には、裏返しや表替えが不可能なものもあるため、注意が必要です。フローリングの上に置く「置き畳」や、段差がない住居で好まれる「薄畳」がその例です。
薄畳は通常の畳と比べると、厚みが1/3程度しかなく、「裏返し」や「表替え」が難しい場合がほとんどです。特に、縁が折り込まれている琉球畳のようなデザインの畳は「裏返し」ができないという特徴があります。
そのため、薄畳や琉球畳を希望するときには、長く使った場合や手入れの方法にも納得した上で選びましょう。
まとめ
畳は、長く使用していると劣化し、見た目が色褪せ、踏み心地が悪くなることがあります。表替えは、畳表と畳縁を新品に交換し、畳床はそのまま使用する方法です。外見は一新されるものの、畳床の状態は変わらないため、畳床も含めて全体の状態を確認した上でメンテナンスを依頼しましょう。
メンテナンス方法で迷ったときには、畳の専門店に相談し、プロの意見を参考にすることをおすすめします。費用に関して懸念がある方も、気軽に問い合わせてみてください。畳の専門家が直接状況を確認して、ご予算内で最適な商品を提案してくれるでしょう。